結論:
- S&P500は「5年以上の長期で米国にベットする覚悟がある人」には買う価値あり。短期で使うお金・元本割れNGなら買うべきではない。
- 月5万円積立なら、10年で元本600万円 → 約700〜860万円(年3〜7%想定)。
- その資産を年3〜4%取り崩すと、10年後の不労所得イメージは月約1.9〜2.6万円。
- 1〜3年は「育成期間」で、まとまった不労所得はほぼ期待できない。
ここから、ちゃんとデータと計算に基づいて整理します。
1. 前提:S&P500はどんな商品で、どれくらい増えてきたのか?
1-1. S&P500とは?
S&P500は「米国の代表的な大型株500社」の株価指数です。
これに連動する投資信託やETFを買うと、
米国の大企業500社に、自動で分散投資している状態
になります。
1-2. 実際の長期リターン(過去データ)
いくつかの統計をまとめると:
- 1957年〜2025年までのS&P500(配当込み)の平均年率リターンは約10.5%(名目)、インフレを差し引いた実質リターンは約6.7%(officialdata.org)
- 1996年〜2022年でも、配当込みの平均年率リターンは約9%(名目)、実質約**6.8%**と、長期でだいたい同じ水準(McKinsey & Company)
- 150年間の平均でも、名目リターンは約**9.5%**くらいで収まっている(Trade That Swing)
さらに、インフレ調整後でも長期の株式リターンは年率7%前後という分析もあります(Dimensional)。
重要なポイント:
- 「長期平均」はたしかに高い
- しかし、毎年きれいに7〜10%で増えるわけではない
2008年には**▲37%、2002年には▲22%という大きなマイナスの年もあります(Slickcharts)。
なので、「長期では増えやすいが、途中の上下はかなり激しい」**というのが現実です。
2. 前提条件と計算方法
あなたの悩みを数字でつぶすため、以下の前提でシミュレーションします。
- 積立額:毎月5万円
- 期間:1・2・3・5・7・10年
- 想定利回り(年率・複利):
- 悲観ケース:3%
- 標準ケース:5%
- 楽観ケース:7%
- すべて「配当再投資・ドル建ての世界」を仮定したイメージ
- 為替・税金・信託報酬などは、ここでは「ざっくりイメージ」のため無視
過去の実績(名目9〜10%、実質6〜7%)を踏まえると、
年3〜7%のレンジで見るのは「現実的な保守〜標準〜やや楽観」程度と考えてよいです(Trade That Swing)。
3. 月5万円を積み立てたときの将来の評価額
3-1. 元本と評価額の一覧
計算には、毎月積立の将来価値(FV)を使っています。
FV = 毎月積立額 × {(1+月利)^(月数) − 1} ÷ 月利
ここでは結果だけ示します(単位:万円、概算)。
| 積立年数 | 積立元本 | 年3% | 年5% | 年7% |
|---|---|---|---|---|
| 1年 | 60万円 | 約60.8万円 | 約61.4万円 | 約62.0万円 |
| 2年 | 120万円 | 約123.5万円 | 約125.9万円 | 約128.4万円 |
| 3年 | 180万円 | 約188.1万円 | 約193.8万円 | 約199.7万円 |
| 5年 | 300万円 | 約323.2万円 | 約340.0万円 | 約358.0万円 |
| 7年 | 420万円 | 約466.7万円 | 約501.6万円 | 約540.0万円 |
| 10年 | 600万円 | 約698.7万円 | 約776.4万円 | 約865.4万円 |
標準ケース(年5%)だけ抽出すると:
- 5年:300万円 → 約340万円(+約40万円)
- 7年:420万円 → 約502万円(+約82万円)
- 10年:600万円 → 約776万円(+約176万円)
あくまでシミュレーションですが、
「長期でコツコツ積み上げれば、数十万〜数百万円の“上乗せ”は現実的に狙える」
というイメージを持つのが妥当です。
4. 何年後に、毎月いくらくらいの不労所得が期待できるか?
4-1. 不労所得=「取り崩し」で考える
S&P500インデックスファンドは、多くが分配金をほとんど出さずに再投資する設計です。
そのため、不労所得を得たいときは、
貯まった資産を毎年○%ずつ売却して現金化する
という形になります。
老後資金研究(いわゆる「トリニティスタディ」)や4%ルールの検証では、
**株式を多めに組んだポートフォリオなら、年3〜4%程度の取り崩しは「30年程度の期間なら概ね安全圏」**とされることが多いです(The Poor Swiss)。
ここでは、年3%・4%取り崩しを基準にします。
4-2. 年5%で運用できたと仮定したときの「月あたり不労所得」
上の表の年5%ケースの評価額を使って、
年3%・4%取り崩しの月額を計算します(概算)。
| 積立年数 | 評価額(年5%) | 年3%取り崩し(月) | 年4%取り崩し(月) |
|---|---|---|---|
| 1年 | 約61.4万円 | 約1,500円 | 約2,000円 |
| 2年 | 約125.9万円 | 約3,100円 | 約4,200円 |
| 3年 | 約193.8万円 | 約4,800円 | 約6,500円 |
| 5年 | 約340.0万円 | 約8,500円 | 約1.1万円 |
| 7年 | 約501.6万円 | 約1.25万円 | 約1.67万円 |
| 10年 | 約776.4万円 | 約1.94万円 | 約2.59万円 |
※四捨五入でざっくり丸めています。
4-3. 読み取るべき現実
- 1〜3年:完全に「育成期間」
- 不労所得はおこづかいレベル
- 5年:月1万円前後
- 7年:月1.2〜1.7万円程度
- 10年:月1.9〜2.6万円程度
S&P500の積立で、
「10年以内にそれだけで生活費を賄うレベルの不労所得を作る」
のは無理があり、
現実的には、
「将来の選択肢を増やすための資産の土台を作る」
という位置づけになります。
5. S&P500を「買うべき人」と「やめた方がいい人」
5-1. 買うべき人
- 5〜10年、それ以上の長期で運用する前提で考えられる
- 一時的な▲30〜▲50%の下落も、“想定内”と理解できる(実際にそういう年が過去にある)(Slickcharts)
- 毎月5万円の積立を証券会社で自動設定して、そのまま触らず続けられる
- 「日本円だけに偏るのはリスク」と考え、米国株にも将来性を感じている
5-2. やめた方がいい人
- 1〜3年以内に確実に使う予定のお金を投資に回そうとしている
- 元本割れの可能性を、頭ではなく感情として受け止められない
- 暴落したときに「むしろ安く買える」と思うより「今すぐ売りたい」と感じるタイプ
- 毎日チャートを見てメンタルが削られそうだと感じる
商品がどれだけ優秀でも、メンタルと時間軸が合わなければ機能しません。
6. 実際にやるなら、やることはシンプル(自動化前提)
「S&P500を長期で積み立てる」という方針を取るなら、行動は以下の通り。
- ネット証券(SBI・楽天など)で口座開設
- NISA口座を開設(まずは非課税枠を活用)
- S&P500連動のインデックスファンド
- 例:SBI・V・S&P500インデックスファンド 等
- 毎月5万円の自動積立(クレカ積立+自動引き落とし)を設定
- 評価額の確認は年1〜2回程度に限定し、売買はしない
ここまでやれば、
「毎月5万円が、勝手にS&P500へ投資され続ける状態」
になり、手動の判断ミスをかなり減らせます。
7. まとめ:S&P500は「長期で時間を味方につける人のための装置」
- 歴史的に、S&P500は名目9〜10%・実質6〜7%前後のリターンを出してきたが、途中の上下は非常に激しい(officialdata.org)
- 月5万円の積立を10年続けると、元本600万円 → 約700〜860万円のレンジが期待値として見込める
- その資産から年3〜4%を取り崩すと、10年後の不労所得イメージは月約1.9〜2.6万円
- 1〜3年では不労所得はほぼ期待できず、「育成期間」と割り切る必要がある
- 「長期でリスクを取り、世界の成長を取りにいく」のがS&P500、「短期で結果が欲しい」のは別の話
最終的な判断軸はシンプルです。
- 5年以上の長期で、米国株のリスクを取りにいく覚悟がある → 買う側
- 数年で結果が欲しい・元本割れNG → 買わない側
この記事の数字を、自分の収入・支出・将来のライフプランに当てはめて、
「月いくら」「何年続ける」のかを決めていくのが、次のステップです。


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