結論:
- S&P500とオルカンをそれぞれ月5万円(合計10万円)ずつ10年積み立てると、
現実的な前提では約1,720万円になる試算。 - その資産から**安全寄りの取り崩し率3〜4%**を使うと、
10年後の不労所得イメージは「月4.3万〜5.7万円」程度。 - 1〜3年はほぼ「育成期間」で、不労所得としては小さく、
5〜10年でようやく「毎月数万円」の不労所得が見えてくる。
ここから、「ちゃんと調べた前提」と「具体的な数字」で記事にします。
1. この記事で解決する悩み
想定読者の悩みは3つ。
- S&P500とオルカンを買うべきか迷っている
- S&P500を月5万円+オルカンを月5万円買ったときに、10年以内でいくら増えるか知りたい
- 1・2・3・5・7・10年後に、毎月どれくらいの不労所得が見込めるか知りたい
この記事では、
「ざっくり」ではなく、
- 実際の過去リターンと
- 主要機関の今後10年のリターン予測
を使って前提を置き、その上で数値計算した結果を出します。
2. 前提となるリターンの設定
2-1. S&P500の過去リターン
S&P500(配当込み)の平均リターンは、期間によって多少違いますが:
- 1957年以降の平均年率リターン:約10.5%(名目)/6.7%(インフレ調整後)(Investopedia)
- 直近30年(1995–2025年頃)の平均年率リターン:約10.4%(名目)/7.7%(インフレ調整後)(Trade That Swing)
- 長期全期間(1926年以降)でも、配当込みCAGRは約**9.8%**とされています(ウィキペディア)
2-2. 全世界株式(オルカン相当)の過去リターン
オルカンは「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」で、
中身はほぼMSCI ACWI(全世界株式)に近い構成です。
MSCI ACWIに連動するETF(ACWI)の過去30年の年率リターンは約**8.26%**です(Lazy Portfolio ETF)。
2-3. 今後10年のリターン予測(S&P500 vs 全世界)
ゴールドマン・サックスの2025年時点のリサーチでは、
今後10年間の予想年間リターンとして:
- S&P500:年率6.5%
- 世界株式全体:年率7.7%
と見積もっています(マーケットウォッチ)。
過去よりやや控えめな数字ですが、
「今後10年は、過去よりリターンが低い可能性もある」という前提に立った保守寄りの予測です。
2-4. 本記事で使う前提
以上を踏まえ、シミュレーションに使う前提は次のとおりに固定します。
- S&P500:年率 6.5%(今後10年の予測ベース)(マーケットウォッチ)
- オルカン(全世界株式):年率 7.7%(同じく今後10年の予測ベース)(マーケットウォッチ)
- 配当はすべて再投資(トータルリターン)
- 毎月積立・複利運用
- 為替・税金・信託報酬はここでは無視(円換算ベースのイメージ用)
3. S&P500とオルカンに月5万円ずつ投資した場合の将来価値
3-1. 設定
- S&P500:毎月5万円
- オルカン:毎月5万円
- 合計積立額:毎月10万円
- 積立期間:1・2・3・5・7・10年
将来価値(FV)の式は以下。
FV = 毎月積立額 × { (1+月利)ⁿ − 1 } ÷ 月利
月利 = (1+年利)^(1/12) − 1
n = 年数×12
この式に、先ほどの年率6.5%・7.7%を代入して計算しています。
3-2. 年数別の結果(S&P500・オルカン個別と合計)
単位は「万円」。小数第2位は四捨五入。
| 年数 | S&P500 月5万 | オルカン 月5万 | 合計(10万円積立) |
|---|---|---|---|
| 1年 | 約61.8万円 | 約62.1万円 | 約123.9万円 |
| 2年 | 約127.5万円 | 約129.0万円 | 約256.5万円 |
| 3年 | 約197.6万円 | 約201.0万円 | 約398.6万円 |
| 5年 | 約351.7万円 | 約362.1万円 | 約713.8万円 |
| 7年 | 約526.4万円 | 約548.9万円 | 約1,075.4万円 |
| 10年 | 約833.5万円 | 約886.7万円 | 約1,720.3万円 |
※10年後の元本は
月10万円×12ヶ月×10年=1,200万円なので、
約1,720万円 → 運用益は約520万円という試算になります。
4. 不労所得として「毎月いくら使えるか?」の前提
4-1. 安全な取り崩し率(Safe Withdrawal Rate)
老後資金や不労所得の世界では、「安全に取り崩せる割合」として
- 年 3〜4% 程度
がよく使われます。
これは、いわゆる「4%ルール」やトリニティ・スタディなどの研究で、
株式多めのポートフォリオなら、
30年程度の期間では3〜4%の取り崩しで
ポートフォリオが枯渇する確率は低かった
という結果に基づいています(Investopedia)。
また、昨今の低金利やバリュエーションを踏まえると、
3〜4%の中でもやや控えめ(3〜3.7%程度)を推奨するレポートも増えています(docs.rbcwealthmanagement.com)。
本記事では、
- 保守的:年3%
- 中央ライン:年3.7%
- やや積極的:年4%
の3パターンで「毎月の不労所得」を計算します。
5. 年数別:いくら貯まって、毎月いくら取り崩せるか
5-1. 合計資産額と毎月の不労所得(3%・3.7%・4%)
単位は「万円」。
資産額は3章の合計(10万円積立)の数字を使用。
| 年数 | 資産額合計 | 年3%取り崩し(月) | 年3.7%取り崩し(月) | 年4%取り崩し(月) |
|---|---|---|---|---|
| 1年 | 約123.9万 | 約0.31万(約3,100円) | 約0.38万(約3,800円) | 約0.41万(約4,100円) |
| 2年 | 約256.5万 | 約0.64万(約6,400円) | 約0.79万(約7,900円) | 約0.86万(約8,600円) |
| 3年 | 約398.6万 | 約1.00万 | 約1.23万 | 約1.33万 |
| 5年 | 約713.8万 | 約1.78万 | 約2.20万 | 約2.38万 |
| 7年 | 約1,075.4万 | 約2.69万 | 約3.32万 | 約3.58万 |
| 10年 | 約1,720.3万 | 約4.30万 | 約5.30万 | 約5.73万 |
5-2. 読み取るべきポイント
1〜3年
- 毎月の不労所得は数千円〜1万円程度
- 完全に「育成期間」と割り切るべき
5年
- 年3.7〜4%取り崩しでも、月2万円前後
- 生活費の中心というより、あくまで補助的な金額
7年
- 年3.7〜4%で月3.3〜3.6万円
- 固定費(家賃の一部・通信費+光熱費など)を賄えるレベル
10年
- 年3.7〜4%で月5.3〜5.7万円
- 「副収入としては意味のある金額」になる
- ただし、これ単体で生活費をカバーするには不足
6. 結局、S&P500+オルカンを買うべきか?
6-1. 買うべきケース
- 投資期間を最低5年、できれば10年以上とれる
- 元本割れ(▲30〜▲50%クラスの下落)の可能性を理解し、
それでも継続投資する前提で考えられる - 毎月10万円の積立を証券会社で自動化して放置できる
- 「10年以内に生活費の全てを不労所得で賄う」のではなく、
「10年後以降の選択肢を増やすための土台づくり」として位置付けられる
6-2. 買わない方がいいケース
- 1〜3年以内に使う予定のあるお金を投資に回そうとしている
- 元本割れを数年単位で耐えられない
- 暴落局面で「むしろ安く買える」と考えるのではなく「すぐ売りたい」と感じる
- 為替リスク(円高で評価額が目減りする可能性)を受け入れられない
S&P500とオルカンは、商品としてはどちらも合理的なインデックスファンドですが、
「どのくらいの期間・どの程度のブレを許容できるか」で向き不向きが決まります。
7. 実行ステップ(自動化前提)
S&P500とオルカンで毎月10万円の長期投資をする場合、やることはシンプルです。
- ネット証券(SBI・楽天・マネックス等)で口座開設
- NISA口座を開設(まずは非課税枠を優先して使う)
- 商品を選ぶ
- S&P500連動インデックスファンド(例:SBI・V・S&P500など)
- オルカン:eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
- 積立設定
- S&P500:月5万円
- オルカン:月5万円
- 以後は
- 原則「積立設定は触らない」
- 評価額のチェックは年1〜2回までに制限
ここまで自動化すれば、
「感情で売買して失敗するリスク」を最小限に抑えつつ、
統計的に期待値の高い資産クラス(株式)に乗り続けることができます。
8. まとめ
- S&P500(6.5%)+オルカン(7.7%)という現実的なリターン前提で、
月5万円ずつ(合計10万円)を10年積み立てると、
資産は約1,720万円になる試算。 - その資産から安全寄りの**年3〜4%**を取り崩すと、
10年後の不労所得は月4.3万〜5.7万円程度。 - 1〜3年は不労所得としては小さく、
5〜10年でようやく「毎月数万円」の副収入レベルに到達する。
「ちゃんと調べた前提」で言えるのは、
S&P500+オルカンの月10万円積立は、
10年以内に“生活費を丸ごと賄う不労所得”を作る手段ではなく、
10年後以降の選択肢(労働時間を減らす/働き方を変える)の土台を作る装置
という位置付けになる、ということです。


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