不動産オーナーの方で、店舗用・事務所用の建物を購入したあとに、
「やっぱり住宅用にして貸したほうが入居が付きやすいのでは?」
「サブリース会社に住宅として一括借上げしてもらったほうが楽なのでは?」
「店舗用として買って、あとから住宅に変えたら消費税は得なのでは?」
と考えることがあるかもしれません。
特に大きいのが、建物を買ったときの消費税です。
店舗や事務所として使う建物を買った場合、条件を満たせば、建物部分の消費税を仕入税額控除できることがあります。
一方で、住宅の家賃収入は原則として消費税が非課税です。国税庁も、住宅の貸付けは非課税と説明しています。(国税庁)
では、店舗用として買った建物を、あとから住宅用に変更した場合、取得時に控除した消費税はどうなるのでしょうか。
結論からいうと、3年以内に住宅用へ変更すると、取得時に控除した消費税の一部を戻すような調整が必要になる可能性があります。
逆に、3年を超えてから住宅用に変更した場合は、この用途変更による消費税の調整は基本的にかかりません。
ただし、「じゃあ3年待てば必ず得」という単純な話ではありません。
この記事では、不動産オーナー向けに、店舗用建物を住宅用に変更した場合の消費税について、できるだけわかりやすく解説します。
- まず結論:3年以内に住宅用へ変えると消費税の調整が必要になりやすい
- 「3年以内」とはどういうことか
- 3年を超えてから住宅用にしたら得なのか?
- ただし「3年待てば必ず得」とは言えない
- 土地付き建物の場合、土地部分は消費税の話から外す
- 建物が大きい場合は「100万円以上」「1,000万円以上」に注意
- 住宅用賃貸建物として買った場合は、そもそも消費税を控除できないことがある
- サブリースの場合は「誰に貸すか」より「何用に貸すか」が大事
- 店舗併設住宅にした場合は、住宅部分と店舗部分を分ける
- 不動産オーナーが確認すべきチェックリスト
- 「得かどうか」の判断は消費税だけで決めない
- 税務調査で聞かれやすいポイント
- まとめ:3年超の住宅転用は消費税上有利な場合があるが、実態が重要
まず結論:3年以内に住宅用へ変えると消費税の調整が必要になりやすい
店舗用として建物を購入し、その建物を店舗や事務所として貸していた場合、家賃収入は基本的に消費税の課税売上になります。
一方で、住宅として貸す場合の家賃収入は、原則として消費税が非課税です。
つまり、ざっくり言うと次の違いがあります。
| 貸し方 | 家賃収入の消費税 |
|---|---|
| 店舗として貸す | 課税 |
| 事務所として貸す | 課税 |
| 住宅として貸す | 非課税 |
| 住宅としてサブリース会社に貸す | 契約上、住宅として転貸することが明らかなら非課税 |
国税庁は、賃借人が自ら住まない場合でも、契約で住宅として転貸することが明らかな場合には、住宅の貸付けとして非課税になると説明しています。つまり、サブリース会社に貸す場合でも、住宅として転貸する契約なら非課税になり得ます。(国税庁)
ここで問題になるのが、建物を買ったときに控除した消費税です。
店舗用として買った建物は、消費税の課税売上を生むために使う建物です。
そのため、購入時に建物部分の消費税を控除できることがあります。
ところが、その建物をあとから住宅用に変えると、今度は非課税売上を生む建物になります。
そこで消費税法では、一定の大きな固定資産について、3年以内に課税用から非課税用へ変えた場合は、控除した消費税を調整する仕組みがあります。
専門用語では、これを「調整対象固定資産を課税業務用から非課税業務用に転用した場合の調整」といいます。
ただ、この記事ではわかりやすく、建物を買ったあと3年以内に住宅用へ変えた場合の消費税調整と呼びます。
「3年以内」とはどういうことか
店舗用として建物を買い、あとから住宅用に変えた場合、ポイントは建物を買ってから何年以内に住宅用へ変えたかです。
消費税法34条では、課税業務用として仕入税額控除した調整対象固定資産を、3年以内に非課税業務用へ転用した場合、転用時期に応じて仕入税額控除を減らす調整を行う仕組みになっています。(ゼイケン)
イメージは次のとおりです。
| 住宅用へ変えた時期 | 調整される金額のイメージ |
|---|---|
| 取得から1年以内 | 控除した消費税の全額 |
| 1年超〜2年以内 | 控除した消費税の3分の2 |
| 2年超〜3年以内 | 控除した消費税の3分の1 |
| 3年超 | この転用調整は基本的になし |
つまり、購入してすぐ住宅用に変えるほど、戻す金額が大きくなります。
逆に、3年を超えてから住宅用に変更した場合、この転用調整は基本的に発生しません。
ここだけ見ると、
「じゃあ3年待ってから住宅用にしたほうが得なのでは?」
と思うはずです。
その感覚は、消費税だけを見ると間違っていません。
3年を超えてから住宅用にしたら得なのか?
消費税だけで見れば、得になる場合はあります。
例えば、次のようなケースです。
- 課税事業者である
- 本則課税で申告している
- 店舗用として建物を購入した
- 建物部分の消費税を仕入税額控除した
- 実際に店舗用として貸していた
- 3年を超えてから住宅用に転用した
この場合、3年以内の転用ではないため、店舗用から住宅用への用途変更を理由とした消費税の調整は基本的に発生しません。
つまり、取得時に控除した建物部分の消費税を、あとから返す必要がない可能性があります。
例えば、建物部分の価格が5,000万円、消費税が500万円だったとします。
店舗用として購入して、条件を満たして500万円の消費税を控除できたとします。
その後、3年以内に住宅用へ変更すると、時期によっては500万円、約333万円、約166万円といった調整が必要になる可能性があります。
しかし、3年を超えてから住宅用へ変更した場合、この用途変更による調整は基本的にかかりません。
そのため、消費税だけを見れば、
3年以内に住宅用へ変えるより、3年超で住宅用へ変えたほうが有利
という場面はあります。
ただし「3年待てば必ず得」とは言えない
ここが重要です。
不動産オーナーが注意すべきなのは、形式だけ店舗用にして、実態は最初から住宅用だった場合です。
税務上は、単に契約書や名目だけで判断するわけではありません。
実際にどう使っていたのか。
購入時点で何のために買ったのか。
建物の構造や設備はどうなっていたのか。
賃貸募集は店舗向けだったのか、住宅向けだったのか。
収支計画は店舗賃貸前提だったのか、住宅賃貸前提だったのか。
こういった実態が見られます。
特に危ないのは、次のようなケースです。
- 購入時点で住宅用に改装する予定が決まっていた
- 店舗用として貸す実態がほとんどない
- 3年間だけ形式的に店舗用にしている
- 店舗用賃貸としての募集資料や契約書が弱い
- 最初からサブリース会社と住宅用転貸の話が進んでいた
- 建物の構造上、住宅用に使うことが明らかだった
このような場合、税務署から見ると、
「本当に店舗用として取得したのですか?」
「最初から住宅用にするつもりだったのではないですか?」
という話になります。
もし最初から住宅用に貸す目的だったと判断されると、そもそも取得時の仕入税額控除が認められない可能性があります。
つまり、3年待てば何でもOKではありません。
土地付き建物の場合、土地部分は消費税の話から外す
不動産オーナーの場合、「土地付き建物」を買うことが多いです。
このとき、土地と建物を分けて考える必要があります。
土地の譲渡は消費税が非課税です。土地と建物を一括で売買した場合も、建物部分についてのみ消費税が課税され、土地と建物の金額を合理的に区分する必要があります。(国税庁)
つまり、消費税の控除や調整で問題になるのは、基本的に建物部分です。
例えば、土地付き建物を8,000万円で買ったとしても、8,000万円全部に消費税がかかるわけではありません。
| 区分 | 消費税 |
|---|---|
| 土地部分 | 非課税 |
| 建物部分 | 課税対象になり得る |
そのため、店舗用から住宅用へ変更する場合に確認するべきなのは、
建物部分の消費税をいくら控除したのか
です。
土地部分は、もともと消費税がかかっていないため、仕入税額控除も転用調整も基本的に関係ありません。
建物が大きい場合は「100万円以上」「1,000万円以上」に注意
店舗用として買った建物を住宅用に変える場合、よく問題になるのが、専門用語でいう調整対象固定資産です。
調整対象固定資産とは、簡単に言うと、税抜100万円以上の建物・建物附属設備・機械装置・車両・備品などの大きな固定資産のことです。国税庁資料でも、税抜100万円以上の建物や建物附属設備などが調整対象固定資産に含まれると説明されています。
不動産オーナーが購入する建物であれば、建物部分が税抜100万円未満というケースは少ないでしょう。
そのため、店舗用建物を買った場合、建物部分はこの調整対象固定資産に該当する可能性が高いです。
さらに注意したいのが、税抜1,000万円以上の建物です。
国税庁資料では、税抜1,000万円以上の棚卸資産または調整対象固定資産を「高額特定資産」としています。
高額な建物を購入する場合は、単に3年以内の用途変更だけでなく、
- 課税事業者の継続
- 簡易課税を選べるか
- 居住用賃貸建物の仕入税額控除制限
- サブリース契約の用途
- 将来の売却
まで含めて確認する必要があります。
住宅用賃貸建物として買った場合は、そもそも消費税を控除できないことがある
ここも重要です。
令和2年度の消費税改正により、一定の居住用賃貸建物については、取得時の消費税が仕入税額控除の対象外になっています。国税庁資料でも、国内で行う居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額は、仕入税額控除の対象としないこととされたと説明されています。
つまり、最初から住宅として貸す建物を買った場合は、建物部分に消費税が含まれていても、仕入税額控除できないケースがあります。
では、店舗用建物ならどうか。
国税庁資料では、住宅の貸付けの用に供しないことが客観的に明らかな建物として、例えば「その全てが店舗である建物」などが挙げられています。
つまり、建物の構造や設備から見て、明らかに店舗用の建物であれば、居住用賃貸建物ではないと考えやすいです。
しかし、購入時点で住宅転用が予定されていたり、建物の一部が住宅として使える状態だったりすると、判断が難しくなります。
不動産オーナーとしては、
「店舗用として買ったから大丈夫」
ではなく、
購入時点で本当に住宅の貸付けに使わないことが明らかだったか
を確認する必要があります。
サブリースの場合は「誰に貸すか」より「何用に貸すか」が大事
サブリースでは、不動産オーナーがサブリース会社に物件を貸し、サブリース会社が入居者に転貸します。
このとき、不動産オーナーから見ると、
「自分はサブリース会社という法人に貸しているから、事業用で課税売上では?」
と思うかもしれません。
しかし、消費税では、最終的に住宅として転貸することが契約上明らかかどうかが重要です。
国税庁は、賃借人が自ら使用しない場合でも、賃貸人と賃借人との間の契約で住宅として転貸することが明らかな場合には、住宅の貸付けとして非課税になると説明しています。(国税庁)
つまり、サブリース会社に貸していても、その契約が住宅用転貸を前提にしていれば、オーナーの家賃収入は非課税になる可能性があります。
そのため、店舗用から住宅用サブリースに切り替える場合は、契約書を必ず確認してください。
確認するポイントは次のとおりです。
| 確認項目 | 見るべきポイント |
|---|---|
| サブリース契約書 | 住宅として転貸することが書かれているか |
| 用途 | 住居用か、店舗・事務所用か |
| 家賃の内訳 | 店舗部分と住宅部分が混在していないか |
| 駐車場 | 家賃込みか、別契約か |
| 共益費 | 住宅家賃に含まれるものか |
| 契約変更日 | いつから住宅用になったか |
店舗併設住宅にした場合は、住宅部分と店舗部分を分ける
建物全体を住宅用にするのではなく、1階は店舗、2階以上は住宅というようなケースもあります。
この場合、全部が課税、全部が非課税という単純な話ではありません。
国税庁は、店舗等併設住宅について、住宅部分のみが非課税とされ、家賃については住宅部分と店舗部分を合理的に区分すると説明しています。(国税庁)
つまり、店舗併設住宅の場合は、
| 部分 | 消費税 |
|---|---|
| 店舗部分 | 課税 |
| 住宅部分 | 非課税 |
となります。
この場合、建物購入時の消費税や用途変更時の調整も、建物全体ではなく、用途ごとの区分が問題になります。
例えば、1階店舗、2階住宅のような建物を購入した場合、
- 店舗部分に対応する建物消費税
- 住宅部分に対応する建物消費税
- 共用部分に対応する建物消費税
をどう分けるかが問題になります。
面積比など、合理的な基準で区分する必要があります。
不動産オーナーが確認すべきチェックリスト
店舗用建物を住宅用に変更する場合、次の順番で確認すると整理しやすいです。
1. 購入したのは土地付き建物か
土地付き建物の場合、土地と建物を分けます。
消費税が問題になるのは基本的に建物部分です。
2. 建物部分の金額はいくらか
建物部分が税抜100万円以上なら、調整対象固定資産に該当する可能性があります。
不動産の建物であれば、多くの場合ここに該当します。
3. 購入時に消費税を控除したか
そもそも建物購入時に消費税を控除していなければ、用途変更による調整の問題は小さくなります。
確認する資料は次のとおりです。
- 消費税申告書
- 仕入税額控除の計算資料
- 固定資産台帳
- 売買契約書
- 請求書・精算書
- 建物と土地の按分資料
4. 取得時の用途は店舗用だったか
店舗用として購入したことを説明できる資料が必要です。
例えば、
- 店舗用の賃貸借契約書
- 店舗用の募集資料
- テナントとの契約書
- 店舗用設備の資料
- 改装前の図面
- 事業用賃貸としての収支計画
などです。
5. 住宅用に変えた日はいつか
重要なのは、取得日から何年以内に住宅用へ変えたかです。
- 1年以内
- 1年超〜2年以内
- 2年超〜3年以内
- 3年超
で、消費税の調整額が変わります。
6. サブリース契約の用途は住宅用か
サブリース会社に貸す場合、契約書上で住宅として転貸することが明らかなら、住宅の貸付けとして非課税になる可能性があります。
契約書の用途欄を必ず確認しましょう。
「得かどうか」の判断は消費税だけで決めない
ここまで読むと、
「3年を超えてから住宅用にすれば得なのでは?」
と思うかもしれません。
確かに、消費税だけを見れば得になる場合があります。
しかし、不動産経営として本当に得かどうかは別です。
見るべきポイントは次のとおりです。
| 判断ポイント | 内容 |
|---|---|
| 消費税 | 3年以内の転用調整があるか |
| 空室リスク | 店舗のまま3年貸せるか |
| 家賃収入 | 店舗家賃と住宅家賃の差 |
| 改装費 | 住宅化するための工事費 |
| 工事期間 | 工事中の空室損失 |
| サブリース料 | 一括借上げ後の手取り |
| 将来売却 | 店舗物件と住宅物件で売却価格が変わるか |
| 税務リスク | 最初から住宅用だったと見られないか |
例えば、消費税の調整を避けるために3年間店舗用で保有しても、その間ずっと空室なら本末転倒です。
消費税で得をしても、家賃収入を失っていれば、トータルでは損になる可能性があります。
逆に、店舗用で安定してテナントが入り、3年後に住宅用へ変更する合理的な理由があるなら、消費税面でも経営面でも有利になる可能性があります。
大切なのは、
消費税のために用途を決めるのではなく、賃貸経営として合理的な用途変更かどうかを先に考えること
です。
税務調査で聞かれやすいポイント
店舗用から住宅用に変更した場合、税務調査では次のような点を確認される可能性があります。
- なぜ店舗用として購入したのか
- 購入時点で住宅用にする予定はなかったのか
- 店舗用として実際に貸していたのか
- 店舗用の賃貸募集をしていたのか
- 住宅用への変更を決めた時期はいつか
- サブリース会社との交渉はいつ始まったのか
- 改装工事の見積書はいつ作成されたのか
- 住宅用への用途変更に合理的な理由があるか
- 3年経過を意識して不自然に時期を調整していないか
特に重要なのは、購入時点の意思決定です。
購入時点で本当に店舗用として使うつもりだったのか。
ここを説明できる資料がないと、あとから不利になる可能性があります。
まとめ:3年超の住宅転用は消費税上有利な場合があるが、実態が重要
店舗用として購入した建物を住宅用に変更する場合、消費税では「3年」が大きなポイントになります。
店舗用として購入し、建物部分の消費税を仕入税額控除した場合、3年以内に住宅用へ変更すると、取得時に控除した消費税の一部を調整する必要が出る可能性があります。
一方で、3年を超えてから住宅用へ変更した場合、この用途変更による調整は基本的に発生しません。
そのため、消費税だけを見ると、3年超で住宅用に変更するほうが有利になる場合があります。
ただし、形式だけ店舗用にして、実態として最初から住宅用だった場合は危険です。
税務上は、契約書の名目だけでなく、建物の構造、賃貸実態、募集資料、改装計画、サブリース契約の内容などを総合的に見られます。
不動産オーナーが確認すべき結論は、次の3つです。
- 土地付き建物の場合、消費税の問題は主に建物部分で考える。
- 店舗用から住宅用へ3年以内に変えると、消費税の調整が必要になりやすい。
- 3年超なら消費税上有利な場合はあるが、最初から住宅用だったと見られると危険。
消費税の「得」だけで判断せず、空室リスク、家賃収入、改装費、サブリース契約、税務リスクまで含めて判断しましょう。
不動産経営では、税金で得をしても、賃貸収入で損をすれば意味がありません。
消費税だけでなく、物件全体の収支で得かどうかを見ることが大切です。

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