保証金を受け取ったときの消費税区分|返す保証金・返さない保証金で判定が変わる

不動産オーナーがサブリース会社や入居者から保証金を受け取った場合、消費税区分で迷いやすいです。

結論からいうと、保証金は**「保証金」という名前だけでは判断しません。**

見るべきポイントは次の3つです。

  1. 将来返す保証金なのか
  2. 返さないことが決まっている保証金なのか
  3. 住宅・事務所・店舗・土地・駐車場のどれに関する保証金なのか

ここを間違えると、会計ソフトの消費税区分も間違えます。


結論:保証金の消費税区分はこう考える

内容 消費税区分 理由
将来返還する保証金 対象外/不課税 単なる預り金であり、売上の対価ではない
事業用建物の保証金のうち返還しない部分 課税売上10% 事業用建物の貸付けに関する権利設定等の対価になる
住宅用建物の保証金のうち返還しない部分 非課税売上 住宅の貸付けに関する対価は原則として非課税
土地の保証金のうち返還しない部分 非課税売上 土地の貸付け・土地上の権利設定は原則として非課税
保証金から原状回復費を差し引く部分 原則、課税売上10% 賃借人に代わって原状回復工事を行う役務提供と考える

国税庁は、事業用建物の賃貸借契約に伴う保証金・権利金・敷金・更新料などのうち、返還しないものは課税対象、契約終了により返還される保証金や敷金などは資産の譲渡等の対価に該当しないと整理しています。住宅に係るものは、返還しない保証金等でも非課税です。(国税庁)


そもそも保証金とは?

保証金とは、不動産賃貸借契約で借主から貸主へ預けられるお金です。

たとえば、次のような目的で受け取ります。

  • 家賃の滞納に備える
  • 原状回復費用に備える
  • 契約上の債務不履行に備える
  • 退去時に一部を差し引く前提で受け取る

つまり保証金には、返す性質のものと、最初から返さないことが決まっているものがあります。

ここが消費税判定のスタートです。


返還する保証金は「対象外/不課税」

まず、契約終了時に返す予定の保証金は、消費税の対象外です。

理由はシンプルです。

保証金を受け取った時点では、貸主にとって売上ではなく、一時的に預かっているお金だからです。

事業用テナントから保証金100万円を受け取った。契約終了時に全額返還する予定。

この場合の会計処理イメージは次のとおりです。

借方 貸方 消費税区分
普通預金 1,000,000円 預り保証金 1,000,000円 対象外/不課税

この時点では、消費税はかかりません。

「お金が入ってきた=売上」ではありません。

保証金は、返す義務がある限り、基本的には負債です。


返還しない保証金は、物件の用途で区分が変わる

保証金のうち、契約上「返還しない」と決まっている部分は注意が必要です。

たとえば、次のようなケースです。

  • 保証金償却
  • 敷引き
  • 解約引き
  • 返還不要の一時金
  • 権利金に近い保証金

このような返さない部分は、単なる預り金ではなく、貸付けの対価として扱われます。国税庁も、資産を貸し付けたときに権利金や保証金などの名目で受け取る金銭のうち、契約終了時に返還する必要のない金銭は、資産の貸付けの対価として課税対象になると説明しています。(国税庁)

ただし、ここでさらに重要なのが、何を貸しているかです。


事業用建物の保証金償却は「課税売上10%」

事務所、店舗、倉庫、工場などの事業用建物を貸していて、保証金の一部を返さない場合、その返さない部分は原則として**課税売上10%**です。

店舗を貸して、保証金100万円を受け取った。契約上、20万円は償却して返還しない。

この場合の考え方は次のとおりです。

内容 金額 消費税区分
将来返す部分 800,000円 対象外/不課税
返さない保証金償却部分 200,000円 課税売上10%

事業用建物の家賃は課税対象です。国税庁も、事務所などの建物を貸し付ける場合の家賃は課税対象であり、土地部分と建物部分に区分していても総額が建物貸付けの対価として扱われるとしています。(国税庁)

そのため、事業用建物に関する返還不要の保証金も、課税売上として処理します。


住宅用建物の保証金償却は「非課税売上」

一方で、住宅用建物の保証金償却は、事業用建物と違います。

住宅の貸付けは原則として非課税です。国税庁は、住宅の貸付けは非課税とし、家賃には月決め家賃だけでなく、敷金・保証金・一時金等のうち返還しない部分も含むと説明しています。(国税庁)

居住用マンションを貸して、保証金20万円を受け取った。契約上、5万円は返還しない。

この場合は次のように考えます。

内容 金額 消費税区分
将来返す部分 150,000円 対象外/不課税
返さない部分 50,000円 非課税売上

ここで間違えやすいのが、「返さない=全部課税」ではないという点です。

住宅の貸付けに関する返還不要の保証金は、課税売上ではなく、原則として非課税売上です。


サブリース会社から受け取る保証金も、住宅転貸なら非課税になることがある

不動産オーナーがサブリース会社に建物を貸して、そのサブリース会社が入居者へ転貸する場合もあります。

この場合、オーナーから見ると借主は法人であるサブリース会社です。

しかし、だからといって必ず事業用になるわけではありません。

国税庁は、住宅用建物を賃貸する場合、賃借人が自ら使用しない場合でも、賃貸人と賃借人との契約で住宅として転貸することが明らかであれば、住宅の貸付けとして非課税になると説明しています。(国税庁)

つまり、サブリース契約でも、契約上「居住用として転貸する」ことが明らかであれば、住宅の貸付けとして非課税判定になります。

判断ポイント

サブリースの場合は、次を確認してください。

  • 契約書に「居住用」「住宅として転貸」などの記載があるか
  • 実際に入居者が居住用として使っているか
  • 事務所・店舗・民泊・マンスリー利用ではないか
  • 保証金のうち、返す部分と返さない部分が分かれているか

ここを見ずに、サブリース会社から受け取ったから全部課税、と判断するのは危険です。


土地の保証金は原則「非課税」

土地の貸付けに関する保証金もあります。

土地の譲渡や貸付けは、原則として非課税取引です。ただし、貸付期間が1か月未満の場合や、駐車場その他の施設利用に伴って土地が使用される場合は、非課税にならないとされています。(国税庁)

土地を貸して保証金50万円を受け取った。契約上、10万円は返還しない。

この場合、土地の貸付けに関する返還不要部分であれば、原則として非課税売上です。

ただし、区画整備された駐車場や設備付き駐車場のように、単なる土地の貸付けではなく、駐車場施設の利用と見られる場合は課税になる可能性があります。


保証金から原状回復費を差し引く場合は注意

退去時に、保証金から原状回復費を差し引くことがあります。

この場合、単に保証金を返さなかっただけと考えるのではなく、原状回復工事費用を賃借人に請求したと考える場面があります。

国税庁の質疑事例では、建物の賃借人には退去時の原状回復義務があり、賃貸人が賃借人に代わって原状回復工事を行うことは賃借人に対する役務提供に該当するため、保証金から差し引く原状回復工事費用相当額は課税対象になるとされています。(国税庁)

保証金30万円を預かっていた。退去時に原状回復費11万円を差し引き、19万円を返還した。

この場合のイメージは次のとおりです。

内容 金額 消費税区分
返還する保証金 190,000円 対象外/不課税
原状回復費として差し引く部分 110,000円 課税売上10%

ここはかなり間違いやすいです。

「保証金から差し引いただけだから消費税なし」と処理すると、課税売上の計上漏れになる可能性があります。


滞納家賃に充当した場合は、元の家賃の区分に合わせる

保証金を滞納家賃に充当する場合もあります。

この場合は、何の家賃に充当したかで判断します。

充当先 消費税区分
事務所・店舗・倉庫の家賃 課税売上10%
居住用住宅の家賃 非課税売上
土地の地代 原則、非課税売上
駐車場使用料 原則、課税売上10%

つまり、保証金そのものの区分を見るのではなく、充当先の取引の消費税区分を見ます。


会計ソフトではどう入力する?

会計ソフトでは、次のように分けて入力すると整理しやすいです。

1. 返還する保証金を受け取ったとき

借方 貸方 消費税区分
普通預金 預り保証金 対象外/不課税

2. 事業用建物の返還不要部分があるとき

借方 貸方 消費税区分
普通預金 保証金償却収入など 課税売上10%

3. 住宅用建物の返還不要部分があるとき

借方 貸方 消費税区分
普通預金 保証金償却収入など 非課税売上

4. 原状回復費として差し引いたとき

借方 貸方 消費税区分
預り保証金 原状回復収入など 課税売上10%

実務では、勘定科目名よりも消費税区分が重要です。

「雑収入」にしても、「保証金償却収入」にしても、消費税区分を間違えると申告数字がズレます。


判断フローチャート

保証金を受け取ったら、次の順番で判定します。

保証金を受け取った
   ↓
将来返す予定がある?
   ↓
YES → 対象外/不課税
   ↓
NO
   ↓
返還しない部分は何に関するもの?
   ↓
事業用建物 → 課税売上10%
住宅用建物 → 非課税売上
土地 → 原則、非課税売上
駐車場施設 → 原則、課税売上10%
原状回復費 → 原則、課税売上10%
滞納家賃 → 元の家賃の区分に合わせる

まとめ

保証金を受け取ったときの消費税区分は、次のように判断します。

  • 返す保証金は、売上ではなく預り金なので対象外/不課税
  • 返さない保証金は、物件用途で判断する
  • 事業用建物の返還不要部分は、原則として課税売上10%
  • 住宅用建物の返還不要部分は、原則として非課税売上
  • 土地の返還不要部分は、原則として非課税売上
  • 原状回復費として差し引く部分は、原則として課税売上10%
  • 滞納家賃に充当する場合は、元の家賃の消費税区分に合わせる

保証金は、入金された金額だけを見ると簡単そうに見えます。

しかし実際には、返還するのか、返還しないのか、何の物件に関するものか、何に充当するのかで消費税区分が変わります。

不動産オーナーが自分で帳簿をつけるなら、保証金を受け取った時点で契約書を確認し、返還部分と返還不要部分を分けて処理することが大切です。

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