外注ライターに記事1本5,000円で依頼した場合、インボイス未登録者への支払いはどう処理する?
ブログ運営をしていると、記事作成を外注ライターに依頼することがあります。
たとえば、次のようなケースです。
外注ライターにブログ記事を1本書いてもらい、報酬として5,000円を支払った。
ただし、そのライターはインボイス登録をしていない。
この場合、会計ソフトの消費税区分をどうするべきでしょうか。
「課税仕入になるのか?」
「仕入税額控除はできるのか?」
「インボイス未登録者だから、全額控除できないのか?」
「5,000円の場合、いくら控除できるのか?」
ここがかなりややこしいところです。
結論からいうと、国内の外注ライターにブログ記事を書いてもらう取引は、原則として「課税仕入」です。
ただし、ライターがインボイス未登録者の場合、仕入税額控除は満額ではなく、経過措置により一定割合だけ控除できる、という処理になります。
この記事の前提
まず、この記事では前提をはっきり分けます。
前提が違うと、結論も変わるからです。
前提1:発注者はブログ運営者
この記事では、発注者を次のように想定します。
- 副業ブロガー
- 専業ブロガー
- WordPressブログを運営している人
- アフィリエイト収入、広告収入、自社商品販売などを目的にブログを運営している人
- 自分で帳簿をつけている人
つまり、趣味の日記ではなく、収益化を目的としたブログ運営のために記事を外注するケースです。
前提2:ライターは国内の個人ライター
この記事では、外注先を次のように想定します。
- 日本国内の個人ライター
- フリーランスのライター
- インボイス登録をしていない
- 記事を1本納品してもらう
- 報酬は税込5,000円
海外在住ライターや海外法人に依頼する場合は、国内取引・国外取引の判定が変わる可能性があります。
この記事では、一般的な「国内ライターへの記事外注」を前提にします。
前提3:支払額5,000円は税込金額とする
この記事では、次の前提で計算します。
記事1本の外注費:税込5,000円
つまり、請求書に「5,000円」とだけ書かれている、または「税込5,000円」とされているケースです。
もし契約が「税抜5,000円+消費税500円=税込5,500円」の場合は、計算結果が変わります。
この記事では、読者が一番迷いやすい「税込5,000円」で説明します。
結論:インボイス未登録者への支払いでも、課税仕入になる
外注ライターにブログ記事を書いてもらう取引は、基本的には「役務の提供」です。
役務の提供とは、簡単にいうと「サービスを受けること」です。
ライターは、ブログ記事を書くというサービスを提供しています。
ブログ運営者は、その記事作成サービスを受けて、報酬を支払っています。
そのため、国内ライターへの記事外注費は、原則として消費税の課税仕入になります。
課税仕入とは?
課税仕入とは、ざっくりいうと次のような取引です。
事業のために、消費税がかかる商品やサービスを購入すること
ブログ運営でいうと、次のような支払いが課税仕入になりやすいです。
- レンタルサーバー代
- WordPressテーマ代
- 有料プラグイン代
- 記事外注費
- アイキャッチ画像作成費
- ブログ用の書籍代
- 取材のための交通費
- ブログ運営用の通信費
今回の外注ライターへの5,000円も、ブログ収益を得るための記事作成費です。
そのため、所得税・法人税の経費になるだけでなく、消費税の世界では「課税仕入」として扱います。
ただし、インボイス未登録者だと仕入税額控除は満額できない
ここが重要です。
外注ライターへの支払いは課税仕入です。
しかし、課税仕入だからといって、必ず消費税を全額控除できるわけではありません。
インボイス制度では、原則として、仕入税額控除を受けるためには、インボイス登録事業者から交付された適格請求書、いわゆるインボイスの保存が必要です。
ライターがインボイス登録をしていない場合、そのライターはインボイスを発行できません。
そのため、原則だけで考えると、インボイス未登録者への支払いは仕入税額控除できません。
ただし、いきなり全額控除不可にすると影響が大きいため、現在は経過措置があります。
インボイス未登録者への支払いは、経過措置で一部控除できる
インボイス未登録者への支払いについては、一定期間、仕入税額相当額の一部を控除できる経過措置があります。
最新のスケジュールは次のとおりです。
| 期間 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 2023年10月1日〜2026年9月30日 | 仕入税額相当額の80% |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 | 仕入税額相当額の70% |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 | 仕入税額相当額の50% |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 | 仕入税額相当額の30% |
| 2031年10月1日以後 | 控除不可 |
つまり、2026年9月30日までに国内のインボイス未登録ライターへ記事外注費を支払った場合、一定の要件を満たせば、仕入税額相当額の80%を控除できます。
2026年10月1日以後は、控除割合が70%になります。
税込5,000円の場合、消費税相当額はいくら?
今回の前提は、税込5,000円です。
標準税率10%の取引として考えると、税込5,000円の中に含まれる消費税相当額は次のように計算します。
5,000円 × 10 / 110 = 454.545...円
つまり、税込5,000円に含まれる消費税相当額は、約455円です。
ただし、インボイス未登録者への支払いなので、2026年9月30日までは、この455円を全額控除できるわけではありません。
80%部分だけ控除できます。
約455円 × 80% = 約364円
つまり、2026年9月30日までの取引であれば、税込5,000円の外注費について、仕入税額控除できる金額はおおむね約364円です。
具体例:2026年9月30日までに税込5,000円を支払った場合
前提を整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発注者 | 課税事業者のブロガー |
| 計算方法 | 原則課税 |
| 外注先 | 国内の個人ライター |
| インボイス登録 | なし |
| 支払額 | 税込5,000円 |
| 取引時期 | 2026年9月30日まで |
| 消費税率 | 10% |
| 経過措置 | 80%控除 |
この場合、処理のイメージは次のとおりです。
| 内容 | 金額 |
|---|---|
| 税込支払額 | 5,000円 |
| 消費税相当額 | 約455円 |
| 経過措置で控除できる割合 | 80% |
| 控除できる消費税額 | 約364円 |
| 控除できない部分 | 約91円 |
つまり、会計ソフトでは、消費税区分を「課税仕入10%」にするだけではなく、インボイス未登録者からの課税仕入として、80%控除の区分を選ぶ必要があります。
会計ソフトによって表示名は違います。
たとえば、次のような区分です。
- 課税仕入10%・80%控除
- 課税仕入10%・適格請求書なし
- 免税事業者等からの課税仕入
- インボイス経過措置80%
名称はソフトによって違いますが、意味は同じです。
「インボイス未登録者からの課税仕入なので、経過措置で80%控除する」という区分を選びます。
2026年10月1日以後は70%控除になる
次に、2026年10月1日以後の取引を見ます。
同じく、税込5,000円の外注費を支払ったとします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支払額 | 税込5,000円 |
| 消費税相当額 | 約455円 |
| 経過措置 | 70%控除 |
この場合、控除できる消費税額は次のとおりです。
約455円 × 70% = 約318円
つまり、同じ5,000円の外注費でも、2026年9月30日までなら約364円控除、2026年10月1日以後なら約318円控除になります。
控除できる金額が減ります。
会計ソフトでの処理
会計ソフトでは、次のように処理します。
2026年9月30日までの取引
| 項目 | 処理 |
|---|---|
| 勘定科目 | 外注費、業務委託費、支払報酬など |
| 消費税区分 | 課税仕入10%・80%控除 |
| インボイス | なし |
| 保存するもの | 請求書、支払明細、振込記録、契約内容など |
2026年10月1日以後の取引
| 項目 | 処理 |
|---|---|
| 勘定科目 | 外注費、業務委託費、支払報酬など |
| 消費税区分 | 課税仕入10%・70%控除 |
| インボイス | なし |
| 保存するもの | 請求書、支払明細、振込記録、契約内容など |
大事なのは、インボイス未登録者だからといって「対象外」や「不課税」にしないことです。
国内ライターへの記事外注は、取引内容としては課税仕入です。
ただし、インボイス未登録者なので、仕入税額控除の金額が制限されるという考え方です。
免税事業者のブロガーはどうなる?
ここまでの説明は、発注者であるブロガーが「課税事業者」で、かつ「原則課税」で消費税を申告している場合です。
では、発注者であるブロガー自身が免税事業者の場合はどうでしょうか。
この場合、そもそも消費税の申告をしません。
そのため、仕入税額控除という考え方も出てきません。
つまり、免税事業者のブロガーが外注ライターに税込5,000円を支払った場合、所得税の経費としては外注費になりますが、消費税の仕入税額控除は行いません。
会計ソフト上は、消費税申告をしない設定であれば、単純に外注費5,000円として処理するイメージです。
簡易課税のブロガーはどうなる?
ブロガーが課税事業者でも、簡易課税を選んでいる場合は注意が必要です。
簡易課税は、実際に支払った経費の消費税を積み上げて控除する制度ではありません。
売上に係る消費税額に、事業区分ごとのみなし仕入率を使って納付税額を計算します。
そのため、簡易課税を使っている場合、外注ライターがインボイス登録しているかどうかは、原則課税ほど直接的には影響しません。
ただし、帳簿や請求書の保存、所得税・法人税の経費管理は必要です。
仕訳例:税込5,000円を外注費として支払った場合
免税事業者のブロガー
免税事業者の場合、消費税申告をしないため、次のようにシンプルに処理します。
借方:外注費 5,000円
貸方:普通預金 5,000円
消費税の仕入税額控除は考えません。
課税事業者・原則課税のブロガー
課税事業者で原則課税の場合は、会計ソフトで次のような消費税区分を選びます。
借方:外注費 5,000円
貸方:普通預金 5,000円
消費税区分:課税仕入10%・インボイス未登録者・経過措置80%
実際の仕訳表示は会計ソフトによって異なります。
会計ソフトが自動で仮払消費税を計算する場合もあります。
重要なのは、消費税区分を「インボイス未登録者からの課税仕入」として処理することです。
請求書には何を書いてもらう?
インボイス未登録者は、適格請求書を発行できません。
しかし、何も書類を残さなくていいわけではありません。
経過措置の適用を受けるためにも、取引内容がわかる請求書や支払明細を保存しておくべきです。
最低限、次のような内容があると管理しやすいです。
| 項目 | 内容例 |
|---|---|
| 請求書の発行者 | ライター名 |
| 取引日 | 2026年6月10日 |
| 取引内容 | ブログ記事作成料 |
| 金額 | 5,000円 |
| 税込・税抜 | 税込5,000円 |
| 支払先 | 振込先口座など |
インボイス番号がない場合でも、取引内容がわかる書類を保存することが大切です。
帳簿には何を書けばいい?
帳簿には、通常の記載事項に加えて、経過措置の対象であることがわかるようにしておきます。
たとえば、摘要欄に次のように書きます。
ブログ記事作成料 インボイス未登録者 80%控除対象
または、
記事外注費 免税事業者等からの課税仕入
このように書いておくと、あとで消費税申告をするときに確認しやすくなります。
注意点:源泉徴収が必要になる場合がある
この記事のメインテーマは消費税です。
ただし、外注ライターへの支払いでは、消費税とは別に「源泉徴収」も問題になることがあります。
個人のライターに原稿料を支払う場合、支払者の立場によっては、所得税および復興特別所得税を源泉徴収する必要があります。
たとえば、法人が個人ライターに原稿料を支払う場合は、源泉徴収が必要になるケースが多いです。
一方で、個人ブロガーの場合は、自分が源泉徴収義務者に該当するかどうかを確認する必要があります。
消費税の「インボイス未登録者かどうか」と、所得税の「源泉徴収が必要かどうか」は別問題です。
混ぜて考えないようにしましょう。
よくある間違い
間違い1:インボイス未登録者だから不課税にする
これは危険です。
国内ライターへの記事外注は、取引内容としては課税仕入です。
インボイス未登録者だからといって、取引そのものが不課税になるわけではありません。
正しくは、課税仕入ではあるが、仕入税額控除が制限される、という考え方です。
間違い2:税込5,000円をそのまま全額控除する
税込5,000円の中に含まれる消費税相当額は、約455円です。
さらに、インボイス未登録者への支払いでは、経過措置の割合をかけます。
2026年9月30日までなら、控除できるのは約455円の80%で、約364円です。
5,000円全額が消費税控除になるわけではありません。
間違い3:請求書を保存しない
インボイス未登録者からの請求書であっても、保存は必要です。
インボイス番号がないから捨てていい、という話ではありません。
取引内容、相手先、金額、日付がわかる資料は必ず残しておきましょう。
まとめ
外注ライターに記事1本5,000円で依頼し、そのライターがインボイス未登録者だった場合の処理は、次のとおりです。
| 判断項目 | 結論 |
|---|---|
| どういう取引? | ブログ記事作成という役務提供を受ける取引 |
| 課税仕入になる? | 国内ライターへの依頼なら原則として課税仕入 |
| インボイス未登録者でも控除できる? | 経過措置により一定割合は控除できる |
| 2026年9月30日まで | 仕入税額相当額の80%控除 |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 | 仕入税額相当額の70%控除 |
| 税込5,000円の場合の消費税相当額 | 約455円 |
| 2026年9月30日までの控除額 | 約364円 |
| 会計ソフトの区分 | 課税仕入10%・インボイス未登録者・経過措置対象 |
| 保存するもの | 請求書、支払明細、振込記録、契約内容、帳簿 |
外注ライターへの支払いは、ブログを収益化するための立派な経費です。
ただし、消費税では「課税仕入かどうか」と「仕入税額控除できるかどうか」を分けて考える必要があります。
国内ライターへの記事外注は、原則として課税仕入です。
しかし、ライターがインボイス未登録者の場合、仕入税額控除は満額ではなく、経過措置によって一部だけ控除する処理になります。
ブログ運営で外注を使うなら、支払額だけでなく、相手がインボイス登録しているか、請求書を保存しているか、会計ソフトの消費税区分が正しいかまで確認しておきましょう。

コメント